このまま、どうにかなってしまうのではないか。
心臓が止まってしまうのではないか。
二度と外に行けなくなってしまうのではないか。
パニック障害は「激烈な不安」や、「強烈な恐怖」を伴う病気です。
実際に体験した本人でないと、その辛さはわからないと言います。
そんなパニック障害ですが、診断がついた直後はどういう病気なのか、自分の症状がいったいどういったものであるのか、本人でもよくわかっていないことも多いのではないでしょうか。
パニック障害に直面した本人はもちろん、パニック障害に一緒に立ち向かう家族の方も一緒にパニック障害とはどういう病気かわかってもらえる記事にしました。
では、一緒にパニック障害理解の旅へ旅立ちましょう!
・・・とその前に。
ひとつだけ、知っておいてほしいことがあります。
パニック障害は、あなたの性格や気の弱さが原因で起こったのではありません。
あなたが弱いからでもありません。
パニック障害とはどんな症状なのでしょうか?

パニック障害は不安症の1つで、主な症状はパニック発作です。
パニック発作とひとことでいってもその中身は多様です。
そのほとんどが強い不安感と恐怖によって引き起こされます。
パニック発作による症状
- 動悸・心悸亢進(しんきこうしん)
- 心拍数の増加
- 冷や汗
- ふるえ
- 息切れ・息苦しさ
- 息が詰まる・窒息しそうになる
- 胸痛・呼吸困難
- 腹部不快感
- しびれ・筋緊張・身体感覚がマヒする・うずく
- 吐き気
- めまい
- 離人感(りじんかん)・発狂恐怖
- 現実喪失感
- 体が熱い/冷たいと感じる
- 死への恐怖
パニック発作のなかで最も多い症状は激しい動悸
動悸といっても『胸がドキドキする』というようななまやさしいものではなく、『心臓が破裂しそう』だとか『心臓を握りつぶされそうな感じ』など、身の危険を感じる強烈な感覚であるのが特徴です。
あまりにも苛烈な感覚のために、救急車を呼んでしまうこともよくあります。
パニック発作の多くは15分程度でその症状が治まるため、病院ついてみたら、どこにも異常が見いだされない、ということも起こります。
本人にとって、その15分間は死を覚悟させるほどの恐怖を伴っているという事を忘れてはいけません。
パニック障害は、このようなパニック発作が繰り返される病気です。
しかも、そのパニック障害の苦痛や社会的障害度はうつ病の人より高く、心筋梗塞の人に近いレベルであるという研究報告もあるのです。
パニック障害の人のQOL(生活の質)はうつ病の人よりも低いという調査もあります。
パニック障害の人の日常生活は大変困難なものであると言えるのです。
パニック障害は次のような経過をたどる
パニック障害はおおむね次のような経過をたどります。
経過1.パニック発作・初回
場所、状況に関係なく、突然パニック発作が起こる。
発作を繰り返すうちに、発作体験と、発作が起こった状況や場所を結びつけ、緊張感を高めてみずから「発作が起こりやすい状況」を作ってしまう。(状況結合性パニック発作)

経過2.予期不安
最初、何の前触れもなく始まったパニック発作は、2度3度と繰り返されるうちに、『パニック発作が起こるのではないか』という強い不安へと変わっていきます。

経過3.回避行動
その不安を減らそうと発作が起こりそうな場所や状況を避けるようになります。

経過4.広場恐怖症
発作を予感する場所や状況が恐怖の対象となる。
恐怖の対象が広がると家から一歩も出られなくなることもある。
人前で発作を起こすことを恐れ、人を避けるようになることもある。

経過5.残遺症状
発作が起こる間隔があき、発作の症状の軽くなるが、心身の調子がすぐれず不快な※不定愁訴(ふていしゅうそ)があらわれる。
不定愁訴とは、頭が重かったり、イライラしたり、なんか疲労感が取れない、眠れないなど、なんとなく体調が悪いという自覚症状があるものの、検査をしても原因となる病気が分からない状態。

経過6.うつ病を併発する
慢性期になると、約60%の人にうつ病があらわれる。
うつ状態は前触れのように最初のパニック発作の前にあらわれることもある。
(参考文献:パニック障害 正しい知識とケア 坪井康次)
パニック発作5か条
パニック発作は恐ろしい病気ではありません。
正しい知識を持つことで対処の方法がわかり、不安が軽減されることにつながります。
- パニック発作は10~15分程度で収まることがほとんどです。
- パニック発作で死ぬことはありません。
- パニック発作が起こったとしても特別な危険はありません。
- パニック発作は、性格によっておこるものではありません。
- パニック発作は正しい診断と治療で治ります。
パニック障害は何が原因で起こるのでしょうか?
じつは、パニック障害の発病のメカニズムはまだ解明されていません。
ですが、パニック発作が起こる際、脳がどのように機能するかはわかってきています。
簡単に言うと、脳の誤作動がパニック発作の原因です。
不安感や恐怖感は、危険を察し適切に対応するために、脳が判断して発する警報です。
適切な不安感や恐怖感は、逃げる、勇気を奮って立ち向かう、毅然としてやり過ごすといった行動に移るための基準となるものです。
ですが、パニック発作が起こる時、この警報は過剰に鳴り響くことになるのです。
パニック発作は神経系の化学物質の不均衡から引き起こされるもので、本人の想像からくるものではないのです。
では、脳内ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
脳の中でも、扁桃体(へんとうたい)と青斑核(せいはんかく)の反応がパニック発作に大きくかかわっています。

扁桃体は感情の中枢で、身体のあらゆる刺激によって届けられる情報を瞬時に益(報酬性)か害(嫌悪性)であるか、環境適応的に判断します。
そして、害であると判断すると、青斑核に不安感、恐怖感を伝達するのです。
この時、伝達を受けた青斑核はその伝達量に応じたノルアドレナリン(神経を興奮させる神経伝達物質)を各器官をつかさどる部位に放出します。
このことにより、動悸・心拍数の増加、しびれ、吐き気、めまいといった身体症状を引き起こします。
ストレスや体質が発症の一因となる
パニック障害の発症にはストレスも大きくかかわります。
ストレスは脳に大きなダメージを与えるのです。
中でも恐怖感を察知する大脳辺縁系(扁桃体や海馬)は強いストレス体験が重なることで些細な事でも恐怖感を覚えるようになるのです。
パニック発作は何の理由もなく突然起こりますが、実は発作の前に強いストレスを受けていたというケースが少なくないのです。
パニック障害や、うつ病、アルコール依存症も、発症の根底には不安があると言われています。
もともと不安を持ちやすい素因(体質・気質)があり、環境による影響によってパニック障害になったり、うつ病やアルコール依存症になると考えられているのです。
パニック障害は遺伝性の病気ではありませんが不安を持ちやすい体質を受け継ぐことはあります。
そこに環境やストレスなどの後天的な外因が加わって発症すると考えられます。
不安はだれにでもあるものですが病的な不安が問題であると言えます。
パニック障害の不安は、いきなり理由もなく始まり身体症状をともなう激烈な症発作を引き起こすのです。
まとめ

とても大切なことを言います。
パニック障害を発症したのは、
あなたの性格のせいではありません!
脳の誤作動が直接の原因です。
そして、発症の根底にあるのは強い不安とストレスです。
不安に対する感受性が強すぎるために脳が過剰反応してしまって発症するのです。
脳の誤作動なのですから、適切な治療で治ります。
だたしい認識が不安を軽減してくれることでしょう。
参考文献:
パニック障害 正しい知識とケア 坪井康次(高橋書店)
パニック症の人の気持ちを考える 貝塚久宣(講談社)
パニック障害100のQ&A キャロル・W・バーマン(星和書店)


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