電車に乗る。
こんな何でもない日常の一風景がとんでもない恐怖に変ってしまうそれがパニック障害です。
パニック障害の中でも電車に乗るという行為は、多くの患者さんが抱える不安要素の塊なのです。
そんな電車でのパニックの起こる原因と対処方法についてお話ししたいと思います。
電車でパニック障害が起きる理由

そもそも走る鉄檻ともいえる電車は、パニック障害を起こす原因の塊といっても過言ではありません。
ではパニックを起こすとき、脳内ではいったいどのようなことがおこっているのでしょうか?
- 電車に乗ると、扉が勝手に閉まります。狭い空間に強制的に閉じ込められるのです。
- 自分はじっとしているのに、強い動きでどんどん別の場所へ運ばれていきます。
- 窓の外の景色はみるみる流れていき、足元はグラグラと不安定に自分を揺さぶります。
- 自分以外の知らない乗客が多ければ多いほど圧迫感や視線を感じます。
- においも気になります。
- 到着するまでに、何か起こったらどうしようと考えてしまいます。
このような精神状態が錯綜して脳は自分の意思とは関係なく緊張状態になってしまいます。
そうすると、交感神経優位になるため、動悸や、めまい、息苦しさを引き起こします。
そうした逃走状態に陥ってしまった自分を感じ、さらにパニックへ向かってしまうのです。
これが、電車内で起こるパニック発作の流れです。
さて、1~6の状態をもう一度見てください。
赤字で書いた部分に注目です。
赤字で示した部分はすべて自分でコントロールできない事項であることに気が付いたでしょうか?
人間は自分でコントロールできない事柄、感情には不安を覚えるものです。
これはDNAにきざまれているのでどうしようもないのです。
電車内でパニック発作は、自分でコントロールできないことに対する大きすぎる不安感が引き起こすと言えます。
予期不安・広場不安との戦い
1.予期不安
電車でのパニック発作を重ねるうちに、電車に乗る前から大きな不安に襲われるということが起こります。
これを予期不安といいます。
「電車に乗っている最中に発作が起こってしまったらどうしよう」
と考えるだけで不安感に支配されてしまうのです。
比較的症状が軽いパニック障害の人はまだ電車に乗ることができるのですが、毎回電車に乗ることに強い不安を覚えます。
予期不安は何に対しても先回りして不安に思ってしまう症状です。
この電車に乗るということはパニックになる原因が多すぎるのです。そのため、不安が不安を呼び、さらに不安になるという悪循環を起こしやすいのです。
この結果、パニック発作が起こってしまいます。
そんなに起きてもないことを不安に思わなくてもいいのに、といわないでください。
それができないから発作を起こしてしまうのです。
2.広場不安
電車に乗っている最中にパニックになってしまった人が、何度か軽いパニックを繰り返すうちに
「電車に乗ったら発作を起こしてしまう」
「発作を起こしてしまうから電車に乗るのが怖い」
と思うようになります。
これは広場不安といわれ、不安に感じる場所へは近づかないという行動をとるようになります。
また、パニック発作と起こした場所を結びつけてしまい、行動することも恐怖の対象へ変わっていってしまいます。
こうなると、外に出る事さえ避けるようになっていきますので、長期戦を念頭に対処する必要があります。
できるだけ早く治療を始めることで全く動けなくなる前に症状を改善出来るチャンスが増えます。
パニック発作かな?と思ったら受診をおすすめします。
電車でパニックを起こさないための対処法12個
どうしても電車に乗らなければいけないときがありますね。
通勤・通学等に必要な人も多いと思います。
実際にパニック障害の人が行っている方法も参考に、パニック発作を起こさないためにできる準備をまとめてみました。
予期不安の軽減
「大丈夫」という安心材料をできるだけたくさん用意することが予期不安の軽減につながります。
1.電車でパニックが起こったのは、たまたま場所が電車だっただけ。電車に乗ると必ずパニックが起こるわけではないと強く意識に働きかける。
実はなかなか腑に落ちないのが、これなんだそうです。
パニック発作と起こした場所はリンクしていないことを納得していなくても、口に出してみるだけでも十分効果があります。
実際に電車に乗って、発作が起こらなかったという体験が増えればおのずと自覚できると思います。
2.パニック発作を抑える頓服薬が処方されている場合は電車に乗る前に飲んでおく。
できることはすべてやっておきましょう。
発作が起こらないという結果が増えていくことでだんだんと不安が薄れていく効果があります。
3.クスリと水を必ず携帯する。
クスリを持っていて、いつでも飲むことができる、という安心感が大切です。
4.空いている電車に乗る。
パニックが起こる原因の一つに、見知らぬ他人が周りにいっぱいいることに対する圧迫感があります。
また、視線を感じる(実際には見られていなくても)ことで強いストレスを感じることが少なからずあるのです。
電車が空いていればゆったりと座っていくこともできます。
疲れも発作の原因になりますので、原因になることはとことん排除しましょう。
5.予定よりも早めに出発をする。
通勤・通学で電車に乗る時は早めの電車に乗ることで、空いた電車に乗ることができます。
また、早めに出発することで、電車に乗っている最中に不調を感じても一旦降車して体調を整えることができます。
6.帰りもラッシュの時間を外す。
ラッシュはどんな人でも辛いものです。
辛いとわかっていて、時間を変えるだけで楽になるのなら時間を外しましょう。
7.各駅停車に乗る。
急行のように通過駅のある電車には「降りられない」不安を増大させます。
各駅停車に乗ることで、いつでも降りることができる安心を得ることができます。
8.思い切ってグリーン車を利用する。
ゆったりと乗ることができる、必ず座れる席が用意されているといった安心を買うことができるのがグリーン車です。
車掌さんがこまめに来てくれることも安心感につながります。
9.楽しい本、好きな音楽、好きな味のタブレットなど、気を紛らわすことのできる安心グッズを持っておく。
緊張感を和らげられるものを持っている、と思うだけでも効果があります。
10.一番後ろの車両に乗る。
いつでも車掌さんに助けを求めることができるということが安心感につながります。
11.ドアの近くに乗る。
いつでも降りることができる場所にいるということが安心につながります。
12.無理をしない。
がんばりすぎてしまうのは良くありません。
しんどいな、と感じたら一旦降車して休みましょう。
無理だと思ったら、帰ってもいいのです。
それでも、発作が起きてしまったら。
パニック発作はしばらくたてば必ず落ち着くことを信じる。
前かがみの姿勢を取る、ゆっくり息を吸うなどの動作を行う。
パニックになっていることを隠そうとしない。
助けを求めたっていいのです。
パニックになっているときは周りの人に伝えることが困難なので、パニック発作であること、しばらくすれば落ち着くことを書いた、パニック障害カードやヘルプカードを用意しておくと便利です。
ヘルプカードはストラップをつけるなどして出しやすくしておくとなおよいでしょう。
このヘルプカードは東京福祉保健局から発行されています。
もしこのパニック障害カードやヘルプカードが手に入らなくても自分で作ってみましょう!
正式なものでないといけないことはありません。
自分なりに伝えたいことをまとめたカードを作っておくだけでもいざという時の安心材料になります。
まとめ
電車でパニック発作を起こした人にとって、電車に乗るということはとても怖い事で、大変勇気のいる事です。
ですが、電車に無理なくのることができればパニック障害を抱えながら生活するうえで大きな助けになることは間違いありません。
パニック発作を起こさずに、電車に乗れた。
たとえ乗れなくても、駅まで行けた。
この小さな一歩が大きな前進につながることを信じてみませんか?
一人でできなくてもいいのです。
誰かと一緒に駅までいってみることから始めてみてはいかがでしょうか。


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