統合失調症とはどんな病気なの?
昔は「精神分裂病」と呼ばれていた
「統合失調症」という言葉を聞いた事はあっても、具体的にどういうことを指すのかがよく分からないという方は多いのではないでしょうか。
統合失調症は、2000年初頭までは「精神分裂病」とよばれてきました。あまりに人格否定的で、当事者にとって社会的なダメージを与える呼称である事、また、統合失調症は「病」ではなく「症候群(ある原因から複数の身体症状をともなう状態のこと)」であることから、現在では統合失調症という呼び方が定着しています。
その経緯からも分かる通り、統合失調症は精神疾患のひとつです。精神疾患には、躁うつ病、アルツハイマー病、強迫神経症、拒食症など様々なものがありますが、統合失調症はその中でも深刻なものとして位置づけられています。
思考を「統合」する能力が「失調」している
では、統合失調症とは一体どんな病気なのでしょうか。症状の詳細については追って説明します。
ひと言で言うと統合失調症とは『行動や考えをひとつにまとめる、つまり思考を「統合」する能力が失われている(=「失調」している)状態』のことをいいます。
誰しも、疲労やストレス、睡眠不足などで考えがまとめられなかったり、冷静な判断能力を失うといったことがあると思います。そうした精神のコントロールが不安定な状況が、強い症状を伴って長引いている状態が統合失調症なのだといえます。
今では不治の病ではない
決して簡単な病気ではありませんが、病態の解明に関する研究が進み、有効な薬や治療法も開発され、今では「不治の病」ではなくなってきています。
難しいことですが、やみくもに恐れるのではなく、正しい知識を身につけ、家族や専門家の協力のもとにできるだけ早期からの継続的な治療に取り組むことが何よりも大事なことです。
統合失調症はどんな症状が現れるの?

特徴的な3つの症状
人によって現れる症状は様々ですが、大きく3つの症状に分類することができます。
症状1)陽性症状
一つ目が「陽性症状」、これは通常には見られない、あるはずのないものが現れる症状のことです。
幻覚、幻聴、被害妄想などが特徴として挙げられます。
症状2)陰性症状
二つ目が「陰性症状」、これは陽性症状とは逆に、通常心に存在しているはたらきが減退したりみられなくなる症状のことです。
意欲や気力がわかなくなったり、思考力が低下して人と関われず引きこもったり、感情が平板化してぼーっとしてしまうことなどを指します。
症状3)認知機能障害
三つ目は「認知機能障害」、これは人間に備わっている高度な知的能力が損なわれる症状のことです。
- 会話が脱線したり支離滅裂なやりとりになる
- ものごとに優先順位をつけられなくなる
- 意図が理解できなかい
など、認知機能障害の症状は多岐にわたります。いずれも周囲の人たちとの協調や社会性の維持を非常に難しいものにするため、社会生活に大きな支障をもたらすことになります。
また、これに伴い「自分は病気かもしれない」と客観的に判断することも出来なくなる「病識の障害」も現れることが、早期発見、早期治療のさまたげとなっています。
適切な診断基準に基づいた判断を
ですが、ここで挙げた症状はどれも統合失調症のみにあらわれる症状というわけではありません。特に「陰性症状」は精神疾患においては色々なケースで非常に広く見られるものです。そもそも強いショックを受けたり、非常に追いつめられた時には誰にでもこのような精神症状は起こりうるし、身体的な病気の影響や薬物の乱用でこうした症状が出ることもあります。
最終的には自己判断をせず、専門家の適切な診断基準に即して判断をするということになります。
どれくらいの患者数がいるの?
どの国でもおおむね同じ罹患(りかん)率
WHO(世界保健機構)の調査によると、統合失調症の生涯罹患率は世界的に見ると国、民族、性別に関わらず0.7〜1%、つまり100人に1人弱が発症するということが分かっています。決して珍しい病気ではないということが言えるでしょう。
この生涯罹患率から考えると、日本における統合失調症患者は100万人程度なのではないかと推測されます。
日本における処遇の遅れ
しかし、2011年の厚生労働省の調査によると、医療機関を受診している同患者数は70万人程度。およそ30%もの人が発症しているにもかかわらず受診していないことになります。
これは、統合失調症に対する偏見および誤解や知識の不足、あるいはこれまで長い間有効な治療法がなかったために、病気を隠したり積極的な受診につながりにくかったためではないかと考えられます。
先進国の中でも特に大きく遅れをとってきた日本も処遇の改善に取り組み、徐々に成果を上げているものの、正しい知識を元に適切な治療を受けられる環境が整うまでにはまだまだ改善の余地があるといえるでしょう。
発症するのは何歳くらいの人が多いの?

「ひきがね」の多い若い時期に多く発症
発症するのは、思春期から30歳くらいまでが多く、全体の7〜8割を占めます。
平均年齢は男性が27歳、女性が30歳で、男性のほうが比較的発症年齢が低い傾向にあります。最も激しい症状を見せるのは20代から30代にかけてであり、14歳以下の発症はまれです。
また、40〜45歳にかけて、発症のリスクが高まる小さなピークがあります。この時期の発症は女性が多く、男性の2倍となっています。
この年齢傾向は、この病気がはっきりとした原因は特定されていないものの、もともとの素因(遺伝を含めたその病気にかかりやすい性質)以上に環境要因が大きく関わっていることと無関係ではないということを示唆していると言えるでしょう。
つまり、思春期から30代にかけては、進学、就職、結婚、出産、転居など、人生の大きな転機がある時期であり、この病気はそういった環境の変化にともなう緊張や不安やストレスが「ひきがね」となって発症する傾向があると考えられているからです。
さまざまな要因の影響と加齢リスク
ですので、我が子が統合失調症を発症した場合、親は「自分の育て方が悪かったのか」ということを非常に悩みますが、そのような単純なことでは必ずしもないのです。
また、ほとんどの病気において加齢は大きなマイナス要因となるものですが、統合失調症に限っては加齢はプラス要因となります。
おしなべて40代になると症状が和らぎ、50〜60代になるとかなり軽減されるか寛解(完治ではないが病状が収まって穏やかな状態になること)状態となります。
まとめ
統合失調症とは、病気ではなく精神疾患の一つ。
行動や考えをひとつにまとめる、つまり思考を「統合」する能力が失われている(=「失調」している)状態のことを言います。
100人に1人弱の割合で発症しています。
人によって現れる症状は異なりますが、大きく以下の三つに分けられます。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 認知機能障害
発症しやすいのは思春期から30代の環境の変化が激しい時期。加齢とともに症状は和らいでいくのは他のほとんどの病気とは逆ですね。
以上、今回の記事で「統合失調症とはどんな症状か?」を理解いただければ幸いです。


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