





膝には体重の10倍以上の負荷がかかることもあり、痛みが出やすい場所です。更に、膝の上側、下側、右側、左側、内側、そして裏側と一言で膝と言っても痛みの出る場所は様々です。
そんな膝ですが、「膝裏が痛い」という声をよく聞きます。「歩いているときに伸ばすと痛い」「正座をすると痛い」「深く曲げると痛い」など色々あります。
ということで、今日は、「膝裏の痛み」について、原因、症状、対処方法などをシェアしていきます。
Contents
1. 日常生活が関係した膝裏の痛みの原因
1-1. 加齢による膝裏の痛み
実は膝裏の痛みの原因のなかで、加齢による膝裏の痛みが一番多いのです。
加齢・・・、つまり歳を重ねることによって膝関節をなめらかに動かす軟骨が減り、炎症を起こし痛みが発生します。
また、加齢と共に筋力が低下し、日常的な動きでも疲労して痛みを感じるようになります。
痛みを感じると、運動をやめてしまい運動量が減りがちです。そうなると、筋力が低下し足腰を守ることが出来ず、更に痛みを増すという悪循環になってしまいます。
さらに、腱(けん)の柔軟性が落ちて、上体を前へ倒す動作をすると膝の裏が痛くなります。


1-2.筋肉疲労による膝裏の痛み
ストレッチなど準備運動をせずにランニングやウォーキングを急に始めると、膝裏が痛くなる場合があります。


マラソンやウォーキングで長距離を走ったり、登山をしたり、立ち仕事で長時間立っていたり、筋肉を使うことなる筋肉疲労は、膝裏やその周囲の筋肉が痛くなります。
靭帯損傷による膝裏の痛みの場合は、足を伸ばすと痛いのが特徴です。サッカーなどの運動で、足を酷使したり相手との衝突で靭帯を傷めて痛みが起こることがあります。


1-3. 成長痛による膝裏の痛み
小さなこどもが膝の裏側が痛い場合、たいていは成長痛です。
成長痛とは、2~6歳の子どもで、日中は元気よく遊んでいるのに、夜寝ているとき、急に脚(あし)が痛いといって目を覚まし、泣いたりしますが、痛みは長く続かず、さすってやったり、だっこしたりすると治り、また寝てしまう状態をいいます。
夕方や夜に痛みがでて、朝になれば治っていることが多いです。


2.膝に関係する他の場所が原因になる膝裏の痛み
2-1. 腰痛による膝裏の痛み


膝裏には脚を動かす様々な神経が通っています。その中に、腰からつながる坐骨神経(ざこつしんけい)があります。その坐骨神経が腰椎部分(ようついぶぶん)において何かしらの原因で圧迫されると、その痛みを膝裏で感じる場合があります。


何らかの原因で腰が痛いと、日常動作はどうしても腰をかばいバランスの崩れた動きになりがちです。そうなると、膝に負担がかかり、筋肉や腱を痛めることになってしまいます。
2-2.腓腹筋外側頭(ひふくきんがいそくとう)の炎症による膝裏の痛み
腓腹筋は、ふくらはぎにある筋肉のことです。踵(かかと)からアキレス腱を通って膝の裏側までつながっています。腓腹筋は普通に立っているだけで、結構使われている筋肉です。そのため疲労しやすい筋肉なのです。重心が前に移るほど疲労しやすくなります。
腓腹筋は足首の関節の動きや膝の曲げ伸ばしに関係する筋肉で、この筋肉の外側の外側頭に疲労が蓄積すると周囲の筋肉や腱などの機能低下を招いてしまうことがあるのです。



2-3.リンパの流れが悪いことによる膝裏の痛み
リンパの流れが悪くなっていると、正座をした際など膝裏を圧迫したときに膝裏が痛むことがあります。
リンパは血管と同様に体中に張り巡らされた、不純物などを細胞から体外へ運び出す管のことです。このリンパは細胞からにじみ出る体液が多くなると「むくみ」となってさまざまな症状を引き起こします。
通常、膝の裏側は膝を少し曲げると指が入るくらいです。しかし、膝裏にふくらみを感じて指が入らないようなら、リンパが滞っている可能性があります。
ただ、膝の裏がはっきりと腫れているような時は、循環器系の病気の恐れがあります。この場合は、早めに医師の診断を受けることが大切です。


2-4.ベーカー嚢腫(べーかーのうしゅ)による膝裏の痛み
ベーカー嚢腫は、膝裏にゴルフボール大の塊ができます。膝窩囊胞(しつかのうほう)とも呼ばれます。
簡単に言うと、膝裏に水が溜まった状態です。
関節の周辺には、関節を円滑に動かすために「関節包(かんせつほう)」という袋があります。その袋の中には、骨液が入っています。
この骨液が、筋肉性疲労、変形性膝関節症などにより炎症が起きたとき、膝裏の関節包の骨液が増えることがあります。


3.膝に損傷がある場合の膝裏の痛み
3-1.半月板損傷による膝裏の痛み
半月板は膝関節の内側と外側にひとつずつある三日月型の軟骨組織のことで、膝の横の動きをサポートしています。

その半月板を損傷してしまうと膝の裏に痛みが走ることがあります。スポーツ中の接触や負荷により半月板が損傷することがあります。




3-2.反張膝(はんちょうひざ)による膝裏の痛み
反張膝とは、膝がまっすぐ以上に伸びて反り返っている状態のことをいいます。そして、膝の裏側全体に痛みを感じることがあります。




反張膝は、日常生活での姿勢、特に歩行姿勢が原因でなってしまいます。反張膝になる人の特徴は次の通りです。
- 脚の裏の重心位置が偏っている
- 膝が反るような力を入れている
- 膝を支える筋力のバランスが悪い
また、反張膝はバレーダンサーの方がなる事が多いのです。


3-3.後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)が原因の膝裏の痛み
後十字靭帯は、膝の中央付近でクロスするように関節の安定性を保つように通っています。後十字靭帯は、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)に比べ約2倍の太さと力学的強度があると言われています。

スポーツ中に選手と接触して事故を起こしたときなどに痛めることが多く、膝の前方から衝撃を受けると膝が伸びて裏側を痛めてしまう場合があります。急な方向転換やジャンプの着地時にも痛めることがあります。


3-4.膝窩筋(しつかきん)の炎症による膝裏の痛み
膝窩筋は、膝関節の裏に付着している筋肉です。短く太めの筋で、太ももとすねの骨を後ろで斜め方向に繋げて周囲の筋肉を連動させる働きがあります。非常に小さな筋肉で、大きな屈曲筋の補助的な役割を果たします。


しかし、この小さな筋肉はつま先を上にあげる動作に深くかかわっています。特に早歩きなど重心を前に傾けながら歩行するとき、膝が伸びすぎず膝を曲げる準備動作を担っています。
この膝窩筋が炎症を起こして、膝裏に痛みが発生します。この場合は、ゆっくり伸ばすと痛くなく、膝を跳ね上げるなど急激な屈伸をする場合に痛くなります。


4.膝の病気が原因の膝裏の痛み
4-1.変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)による膝裏の痛み
変形性膝関節症は、膝関節の形や軟骨に異常が起こり、膝関節が徐々に変形していく病気です。
膝の関節の間には軟骨があり、屈伸運動を滑らかにする働きがあります。軟骨は、加齢するにつれて変形して弾力性が弱くなり、やがて表面が消耗されていきます。
日常生活や運動等で、過剰に負荷をかけ酷使すると軟骨が損傷し、さらに進行していくと骨が露出し摩耗されていきます。軟骨がすり減ることで骨同士が直接ぶつかるようにると、小さな骨折や骨が固くなってしまうなどの骨の異常が起こる場合があります。
骨は欠けたり、損傷すると修復機能が働いて元の形へ戻そうとします。しかし、その働きが過剰に働いてしまうと骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげができてしまうことがあります。骨棘ができてしまうと今まで以上に骨と骨がぶつかってしまいさらに痛みがひどくなってしまうことがあります。



4-2.大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)による膝裏の痛み
大腿骨内顆骨壊死は、一般的に60歳以上の女性に多く見られる膝の病気です。
骨壊死(こつえし)には、明らかな原因がなく発症する特発性骨壊死と、他の病気のために投与されたステロイド剤が原因で生じる二次性骨壊死の2種類があります。
大腿骨内顆骨壊死は特発性骨壊死に分類されます。この骨壊死はある日突然発症します。そして、発症する場所の多くが大腿骨の内側顆(ないそくか)です。

膝に激痛を伴いますが、発症2か月まではレントゲンでも変化がみられないために変形性膝関節症と区別できないことが多くあります。
特発性大腿骨顆部骨壊死は、現在のところ原因や病態が完全に解明されていません。病気が進行すると手術が必要になることもあります。
早期発見した時点で有効な治療を行うことで、進行を食い止めたり、壊死した部位を修復して手術を回避することが期待できます。


4-3.化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)による膝裏の痛み
膝は体の中でも最もよく動かす関節の一つです。そんな関節を円滑に動かすために「関節包(かんせつほう)」というものがあります。
この関節包は関節を包んでいる袋で、中に骨液という液が入っています。


しかし、何らかの原因により骨液が増えすぎてしまい、関節内に溜まることがあります。この状態を「水腫」と言います。


では、早速、水腫の原因を見ていきます。水腫の原因は3つ。
- 軟骨や靭帯などの損傷
- 関節部分の炎症
- 細菌感染
3つのうち2つはさまざまな要因から水が溜まって痛みを発しますが、最後の細菌感染の場合は水が溜まると同時に激しい痛みに襲われます。
我慢できない痛みや腫れ、酷いときには動くこともままならなず、食欲不振や発熱といった症状がでてきます。
これが化膿性関節炎です。
化膿性関節炎は、次の原因によって引き起こされます。
- 黄色ブドウ球菌
- 連鎖球菌
- 肺炎球菌
- MRSA
- 淋菌
- 緑膿菌
- 大腸菌
他にも様々な原因菌によって引き起こされます。


4-4.結核性関節炎による膝裏の痛み
結核性関節炎は、細菌感染です。結核菌に感染することで発症します。
結核性関節炎は、まず関節痛があります。時間帯によっても変動しますが、それほど強い痛みではありません。
次の様な症状があれば、結核性関節炎の可能性があります。
- 膝関節に軽い痛み(特に夜間に痛みが増す)
- 膝がこわばり動きが悪くなる
- 膝が腫れる
- 膝に熱を持つ
- 膝に水が溜まる
結核菌は、通常、肺で感染して肺結核を発症します。その後、血流に乗って関節部にも移動していきます。
肺結核を患っている時に発症したり、過去、結核を患った際の結核菌が体内に残っていて、体の面鋭気が弱くなった時に再び活性化して発症するケースがあります。
膝裏の痛みとともに咳や痰、微熱が続いているようなら必ず病院の呼吸器科か独立行政法人国立病院機構を受診してください。
4-5.下肢静脈瘤による膝裏の痛み
足の血管が浮き出ている、蜘蛛の巣のように透けて見える、夕方になとふくらはぎが重い・・・。このような症状があれば、下肢静脈瘤の可能性があります。
むくみやだるさ、かゆみを伴うこともあり、正座した時などに、これが圧迫されて痛みを感じます。
この下肢静脈瘤は、立ち仕事の人の多く見られる病気で、推定患者数は1000万人以上と推定されています。そして、その大半が女性です。
血管には、心臓からの血液を全身に送り出す動脈と、使い終わった血液を心臓に戻す静脈があります。
脚の静脈には重力に逆らって血液を下から上にに送り返すため、血管内に逆流を防ぐ「八」の字の弁がいくつもついています。この弁が壊れて、静脈に血液が溜まり、その部分が瘤(こぶ)のように腫れるのが、下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤は、長時間立ったままの姿勢や、運動不足が原因と言われています。
5.膝裏の痛みを解消するストレッチ
上記で見たように、様々な原因によって膝裏に痛みを生じることがありますが、膝裏の痛みはストレッチで解消することが可能な場合もあります。
症状が軽いようなら、まずはストレッチをして膝裏の痛みの解消を図ってみて下さい。
ストレッチは、筋肉のこわばりを緩め、関節の柔軟性を取り戻すことが目的です。
幾つか膝裏に効果的な動画を用意してので、試してみて下さい。
5-1.膝裏の効果的なストレッチ方法
5-2.膝裏の痛みに効くストレッチ
5-3.膝裏のリンパを流して痛みを解消簡単ストレッチ
6.膝裏の痛み予防・再発防止をするテーピング
テーピングは、ケガの予防、再発防止、応急処置のためにテープなどを用いて、関節、筋肉などを補強・固定するモノです。
スポーツ選手などが脚や腕などに白や肌色のテープを貼っている姿を見たことがあると思いますが、アレです。
膝裏に痛みがある時も、テーピングで痛みを緩和する事ができます。
6-1.膝裏に違和感がある場合のテーピング
6-2.半月板損傷のテーピング
7.まとめ


- 加齢や筋肉疲労と言った日常的に発生しうる痛み
- 靱帯や半月板といった膝の損傷による痛み
- 坐骨神経など他の場所が原因の痛み
- 関節炎、静脈瘤など病気による痛み
本当に様々ね


まずはストレッチが一般的かしら。運動する時、痛みが酷い時ならテーピング。そして、様子を見て長引くようなら専門医に相談することね




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