せっかく治った椎間板ヘルニア。これ、また再発することあるの?
ヘルニアの治療を開始して、だんだんと痛みやしびれなどの症状がなくなり、医師からもめでたく「治りました」との診断。治療に数ヶ月はかかりますから、とても嬉しい瞬間です。
しかし同時に心配になるのは「また再発する可能性ってあるのかな?」ということ。いったん治ったヘルニアの症状が、再度出てしまう。こんなことはあるのでしょうか?
残念ながら、一定数の割合で再発は見られます。いちど治っても、同じ箇所、もしくは別の椎間板にヘルニアが出てしまうことは、実は充分に起こりうることなんです。
ヘルニア再発率のデータ
この椎間板ヘルニアの再発、どのくらいの割合で起こっているか?
“再発率”については、各医療機関が発表しているものにバラツキがあるため一概には言えません。ただ、それらいろんなデータを見ていきますと、おおまかな統計としては
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- 再発率は5年以内に約50パーセント
- 手術をおこなった患者のうち5〜10パーセントが、同じく5年以内に再手術をしている。
- 手術の成功率は90パーセント(メジャーな手術法『LOVE法』『MED法』において)。
- 3〜5年以内の再発がもっとも多く、これが5年以降になると数がグッと少なくなる
こんな数字が一般的なようです。
なぜ、いちど治ったヘルニアが再発してしまうのか?
ヘルニアの原因は、遺伝や老化など自分でコントロールできないものもありますが、多くは日ごろの生活習慣が主です。
そしてヘルニアの治療法である薬物療法や手術などはすべて痛みを抑えたりヘルニアを切ってしまうなどの“対処療法”。ヘルニアの原因を無くすわけではありません。ですから一度治ったとしても、そのあと同じような生活を続けていれば再発してしまうのは当たり前のことなんですね。
この記事では、どんな原因でヘルニアが再発してしまうのか?どんなことに気をつければ防止できるのか?を詳しく分かりやすく解説しています!
再発の原因と予防のために。どんなことが大切?
まずは姿勢〜前屈み体勢に注意!
ヘルニアの原因〜椎間板に負担をかけてしまう姿勢として、まず1番に言われるのが“前屈みの体勢”です。じつはこれが、さまざまな姿勢のなかでもっとも大きな負担がかかっています。なんと、まっすぐ立った時に比べて2.5倍!
さらに、日常生活においても前屈みの体勢をとることは思った以上に多いもの。床の荷物を持ち上げる、洗面台で顔を洗う、掃除機をかける、台所仕事など‥。知らずのうちにヘルニアの原因を作っていることになるんですね。
対策としてオススメなのは、膝を一緒に曲げること。


腰にかかる負担が膝に分散されて、ヘルニアの予防につながります。
そのほか日常においての姿勢
日常生活のなかでとりがちな悪い姿勢ももちろんNG。立ったときと座ったとき、両方において解説します。
1.立ったときの正しい姿勢
「背筋をシャンとして立て」とは言われるけど、いまいちよ分かっていなかったりするもの。立ったときに良い姿勢がとれているか、こんな方法ですぐチェックできます。
壁に沿って立ってみましょう。

このとき、赤点の4か所
- 後頭部
- 肩甲骨
- おしり
- かかと
が壁にくっ付いている状態。これが腰〜椎間板にもっとも負担がかからない、正しい姿勢なんですね。もし「うわっ、くっつけると窮屈だな〜」と感じたら、残念ながら普段の姿勢が良くない証拠です。
2.座ったときの姿勢
長時間のデスクワークなどによる猫背は、もちろん良くありません。椅子に座ったときの正しい姿勢はこんなものです。

なお、床座りよりも椅子を使ったほうが腰への負担は軽いです。床座りなら正座がベスト。あぐらは左右のバランスがくずれて良くありません。
詳しくはこちらの記事もぜひ!→今日からできるヘルニア予防!正しい姿勢チェックの仕方から、効果的な運動法まで【画像解説付き】。
肥満もじつはヘルニア再発の原因
体型を維持して、肥満を防止することも大切。理由はシンプルに身体が重ければ、そのぶん椎間板によけいな負担がかかるから。さらに肥満を原因とするヘルニア発症は、とくに男性に多く見られます。それはなぜなんでしょう?
理由は男女の太りかたの違いにあります。ホルモンの関係から、男性はお腹に脂肪がつく太りかた(いわゆるビール腹)になるのですがこれが問題。

せり出したお腹により、重心が前に偏ってしまいます。すると真っ直ぐ立ちづらくなり、背骨〜ひいては椎間板に無理な負担をかけてしまうんですね。
※ダイエットについての注意点。ハードなスポーツは避けよう!
肥満防止にはまず食事。そして適度な運動が基本ですが、ヘルニア予防には、ハードなスポーツは避けるのが基本です。ウォーキングがベスト。「いやいやそれじゃ物足りないよ。ジョギンクのほうが良いんじゃない?」というかたもいらっしゃいますが禁物。じつは椎間板には大きな衝撃となり負担を与えてしまいます。
筋肉をつけることも大切
ヘルニアの予防・対策でよく語られるのは「腹筋、背筋を鍛えましょう!」というもの。
しかし、一般的な腹筋/背筋の筋トレでは負担が大きく、無理をするとかえって再発の原因になってしまうことにもつながります。


そしてヘルニア対策に必要なのは、この腹筋・背筋運動で使うのとはまた別の筋肉『インナーユニット』と呼ばれる筋肉です。
ヘルニア対策に鍛えるべき『インナーユニット』とは?
ヘルニア対策のカギになる、鍛えるべきなのは『インナーユニット』。お腹〜骨盤にかけての、4つの筋肉たちのことをそう呼びます。
詳しくは、1つ1つ
- 腹横筋 ふくおうきん
- 多裂筋 たれつきん
- 横隔膜 おうかくまく
- 骨盤底筋群 こつばんていきんぐん
という筋肉たち。胴体〜骨盤周りを包むようについています。

さてこのインナーユニット、なぜヘルニア対策のカギなのでしょうか?理由は2つあります。
理由その1.姿勢維持
1つは、姿勢維持のため必要な筋肉だからです。
先にも話しましたが、椎間板ヘルニア再発予防の1番の基本は正しい姿勢。それを保つのに必要な筋肉が、これらインナーユニットなんですね。とくにこのうち胴体を包むようについている『腹横筋』は、“自前のコルセット”という別名まであるほど姿勢維持には欠かせない筋肉なんです。
理由その2.腹腔内圧
インナーユニットが作り出す『腹腔内圧 ふっこうないあつ』という力も、ヘルニア対策にはとても重要なんです。腹腔内圧とは、胃腸などの内臓を正しい位置にキープするためにお腹周りにかかっている圧力のこと。
これが弱いとどうなるのでしょうか?内臓が本来の位置からズレてしまいダラ〜ンと前にせり出し、俗に言う“お腹ぽっこり状態”になります。すると下腹部に集まった内臓の重みが、腰の椎間板に大きな負担をかけてしまうんですね。
どうやってインナーユニットを鍛えるの?
インナーユニットは、腹筋背筋運動の筋トレで使うのとはまた別の筋肉。どのようにして刺激し、鍛えることができるのでしょう?
それは“腹式呼吸”です。おなかを凹まし膨らます腹式呼吸で使う筋肉が、まさにこのインナーユニットなんです。
腹式呼吸のやりかた
腹式呼吸‥。歌のボイストレーニングなんかを受けたことがないと、なかなか改まって実践する機会はないもの。最初は感覚がつかみにくかったりするものです。
以下にコツを掴みやすいやりかたを紹介しますので、参考に試してみてください。
- 立ってリラックスした状態で、まずは息をゆっくりと吐き切る
- 鼻から息を吸う。吐ききったぶん身体が自然と吸い込むのに任せる。お腹が膨れていく感覚が掴める
- 息を2秒ほど止めてから、また吐き切りお腹が凹む感覚を得る
- 吐ききったらまた2秒ほど息を止めてから、また自然に任せて息を吸い込む
腹式呼吸は、無理な負荷をかけないトレーニングで手軽に出来るものです。さらにヘルニア対策に限らず免疫力向上、冷え性の解消など、さまざまな効果があるんですね。ぜひ生活の中に取り入れてみてください!
まとめ
いかがだったでしょうか?ヘルニアの治療はあくまで「いまあるヘルニアを無くすもの」。原因を解消しなければ、再発してしまうことは残念ながらおおいにあり得ます。ぜひ参考にしてみてください!

たの

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