ある病院での一場面
なんか腫れているみたいで、主人は、おまえ痛風(つうふう)じゃないの?っていうんですけど。」「痛みが出はじめたのはいつです?激しい痛みがありますか。」「最初に痛いなって思ったのが2週間くらい前で、だんだんひどくなってきて、昨日は足を着けないくらい痛くて。夜中もジンジンしてよく眠れませんでした。」「ああ、それなら痛風ではないですね。痛風なら1週間くらいで症状が一旦治まるはずですから。歩きすぎじゃないですか?立ち仕事もしていますよね。外反母趾もあるし、関節の炎症でしょう。」「えーっ、そうなんですか!」「痛み止めとシップをだしておきますので、様子を見て下さい。」
お医者さんは、ご自分はよく分かっているので、患者さんも知っていて当然だと思っているのかも知れません。
ぼくらも、なにげなく「○○炎」「△△の炎症」という言葉を使ってしまうのですが、あとでフォローしないといけないことも多いです。
そこで今回は、炎症って何?という事から、外反母趾と炎症の関係について解説をしていきます。
そもそも「炎症」とは何?
「炎症」と聞くと、よからぬものが身体の中に入ってきて悪さをしているような場面を想像して、大丈夫なの?と心配する方もいらっしゃるようです
「炎症」は病気ではなく、刺激や攻撃に対して生体が行う防御反応(ぼうぎょはんのう)です。
炎症の種類
刺激、攻撃にはさまざまなものがあります。
からだの外から受ける刺激には、
- 細菌やウイルスの進入
- 紫外線や赤外線などの光
- X線やマイクロ波などの電磁波
- 強い酸やアルカリなどの有害な薬物
- 熱や冷たさの温度変化
- 機械的な力(打撃、捻り、切断等)
などがあります。
また、本来害のないものに対して生体が過剰に反応する
アレルギーも炎症の一種です。
今や国民病とも言える花粉症も、その実態は結膜炎(けつまくえん)や鼻炎です。
リウマチなどの膠原病(こうげんびょう:免疫力・抵抗力に異常をきたし、全身のあらゆる臓器に慢性的な炎症を引き起こす疾患群の総称)は自分のからだの中にあるものを敵であると誤認(ごにん)して攻撃することで起こります。
炎症が起きるとどうなるの?
炎症の起きている場所は
- 赤くなり
- 腫れて
- 熱をもち
- 痛み
- 機能的な障害
を起こします。
(炎症の5徴候といいます)
炎症の経過
炎症は一般に次の様な経過をたどります。
まず局所に炎症の原因が加わると、血管が広がり、透過性が高まります。これは原因となるものに攻撃を加えたり、壊れた細胞を処理したりするために、白血球が血管から体組織中にしみ出すためです。
白血球の活動により原因の排除がすすむと細胞や血管の再生が始まり修復がなされます。
この過程で発熱したり、痛みを感じたりします。

炎症は急性・慢性の2種類に分類される
そして経過の長さによって、炎症は
- 急性炎症
- 慢性炎症
の2種類に分類されます。
期間 | 症状 | |
急性炎症 | 24時間~数日以内に収まる | 強めではっきり現れる |
慢性炎症 | 経過が長くなる | 症状は激しくない |
外反母趾の炎症
外反母趾の炎症は、変形して出っ張った箇所の圧迫、摩擦によって皮膚や皮下組織、滑液包(かつえきほう:関節の周囲にある潤滑液を産生する扁平な袋)が破壊されて起こります。
また、歪みによって関節の運動軸が曲がったり、ねじれたりして負荷がかかることも原因になっています。
急性で起こることはあまりなく、慢性の経過をたどることが多いです。
初期の段階では、長く歩いたり、きつめの靴を履いたりしたときに痛みが出ますが、それ以外のときには痛みが出ません。
しかし、放っておくと次第に靴を履いていないとき、はだしで歩いても痛みが出たり、じっとしていても疼(うず)くように痛んだりするようになります。
バニオン(bunion)
母趾の関節の内側にある滑液包が炎症を起こして肥厚した状態をバニオンとよびます。
当院のクライアントさんの実に8割以上の方にこれが見られます。

バニオンは、母趾の関節内側の盛り上がりで、皮膚表面は赤みを帯びていることが多く、触るとブヨブヨした感触があります。バニオンの上にタコができることもあります。
一度形成されると、出っ張って靴の内面に当たりやすくなるため、なかなか治りません。できるだけ初期の段階で手を打って炎症を慢性化させないようにしましょう。
自宅でできる対処法
自分でできる対処法としては、次のようなものがあります。
1.腫れて熱をもっているようなとき
氷枕や冷却シートなどで冷やす
2.関節を曲げると痛むとき
テープや包帯で母趾の関節が動かないように固定する
3.当たっている箇所が圧迫されて痛いとき
出っ張りが靴の内面に当たらないように保護用のパッドを当てる
テーピング等で関節の出っ張りを矯正し一点に力が集中しないようにする
靴に中敷きを敷いて横アーチを支えて足の横への広がりを防ぐ
4.痛みが軽いか、あまりないとき、あるいは予防の為
関節のマッサージやストレッチ
★右足の場合★
1)椅子に腰掛け、右足を座面にのせてあぐらをかくようにします
画像引用:「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本 山田 光敏 (著) PHP研究所 (2009/6/18)」
2)左手の親指を右足の母趾のつけ根の内側に、他の4指を母趾の外側にあてがいます。
左手の親指で関節の内側を円を描くように軽く5回もみます。
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画像引用:「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本 山田 光敏 (著) PHP研究所 (2009/6/18)」
3)右手で足の甲をつかみ、左手で右足の母趾がまっすぐになるように矯正しながら、ゆっくりと小さく時計回りに5回、反対側に5回まわします。
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画像引用:「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本 山田 光敏 (著) PHP研究所 (2009/6/18)」
4)右手をややつま先側にずらし、足の甲の骨を背側に捻るように持ちかえます。
左手の親指で右足の母趾のつけ根を内側から支えながら、人差し指で右足の母趾を真っ直ぐになるようにして、母趾の関節外側をストレッチします。
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画像引用:「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本 山田 光敏 (著) PHP研究所 (2009/6/18)」
ただし、これらは炎症が比較的軽い初期の段階での話で、痛みが強い場合や変形が進んでしまったものについては専門医の診察を受けましょう。
まとめ
炎症とは、刺激に対する生体の防御反応で、一般的には発赤、腫脹、熱感、痛み、機能障害の5徴候が現れます。
外反母趾による関節内側部の炎症は、バニオンという皮下組織の増殖を伴う事が多く、靴の内面に接触、圧迫を受けることで進行します。
当初は、靴を履いたときだけ、長く歩いたときだけであった痛みが、次第に靴を履かなくても、歩かなくても出るようになります。
症状が軽いうちなら、出っ張りを矯正、保護するように固定し負担を掛けないようにしていれば治ります。
また、予防の為の軽いマッサージやストレッチも有効です。
しかし、痛みや変形の程度が進んだものは専門医に相談しましょう。
■参考サイト
■参考書籍
- かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本
山田光敏(著) PHP研究所 - カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版
坂井 建雄(著) 日本医事新報社

ホームページはこちら⇒『さいたま外反母趾矯正センター』

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